【第七話】バイトが、僕のサークルになった

前回、僕は入学直後に入ったバレーボールサークルを辞めました。

大学生ならサークルに入って、友達と遊んで、合宿に行く。そんな「大学生らしい大学生活」に、自分を合わせようとしていたことにも気づきました。

でも、サークルを辞めたからといって、僕の大学生活から何かがなくなった感覚はありませんでした。

むしろ僕には、すでに毎週楽しみにしている場所がありました。

第2話で、自分の足で探して見つけたバイト先です。

火曜日、1限が終わったらバイトへ

大学1年生の春学期、火曜日は1限だけでした。

10時30分に授業が終わると、少し早めに食堂で昼食を済ませ、そのまま日吉から地元へ。13時頃から19時頃までバイトをする。それが毎週火曜日の過ごし方でした。

前回話したバレーボールサークルも火曜の夜に活動していましたが、夜まで日吉で時間を潰すより、僕は地元へ帰って働く方を選んでいました。

一番の理由は単純で、バイトが楽しかったからです。

火曜日に一緒に働くのは、同期よりも先輩が中心でした。ほとんどの人が優しく、新人だった僕にも親身になって仕事を教えてくれました。

そんな中、一人だけ少し違う先輩がいました。

ここではSさんとします。

20代前半のSさんは、あまり笑わず、話し方も淡々としていて、新人からするとかなり怖い人でした。

でも、仕事は驚くほど速くて正確。すでに働いている人たちからは、とても好かれていました。

Sさん曰く、

「みんなが優しく教えているから、自分まで同じ役割をする必要はない。自分は厳しく、ちゃんと働けるようになってもらう役割をやる」

とのこと。

一方で、新人から怖がられることは少し気にしていたようで、「どうしたら怖がられずに教えられるかな」と相談されたこともあります。

怖いだけの人ではないと分かってから、僕はSさんをかなり好きになりました。

Sさんに話しかけてもらいたかった

Sさんには、もう一つ自分なりのルールがありました。

仕事中、自分から雑談をするのは、「話しかけても業務に支障が出ないくらい仕事ができる人だけ」。

当然、新人だった僕は対象外です。

だから僕は、Sさんから普通に話しかけてもらえるようになることを、一つの目標にしました。

毎週火曜日は必ず出勤し、他の日にもシフトへ入りました。同期よりもかなり多く働いていたと思います。

働く時間が増えれば、その分だけ仕事にも慣れていきます。

できることが増え、周囲を見る余裕もでき、少しずつ先輩たちから一人の戦力として扱ってもらえるようになりました。

そして、そんな生活を続けていると、アルバイトリーダーへの昇格に向けたトレーニングが始まりました。

これは本当に嬉しかったです。

まとまった勤務時間を確保できていたため、研修を進めやすかったという事情もあったと思います。それでも、自分より前から働いていた人たちより早くリーダー研修を始められたことは、僕にとって大きな自信になりました。

尊敬していた先輩たちは、みんなリーダーとして働いていました。

自分もいつか、あんなふうになりたい。

そう思って働いてきたものが、少しだけ形になった気がしました。

「バイトがサークルみたいなもの」

当時の店長から、こんなことを言われたことがあります。

「君は、バイトがサークルみたいなものだよね」

今振り返っても、本当にその通りだったと思います。

一緒に働く人がいる。年上の先輩がいる。憧れる人がいる。目標がある。そして、そこへ行くこと自体が楽しい。

僕がサークルに求めていたものの多くは、すでにバイト先にありました。

しかも、一緒に働いていた大学生の先輩たちの中にも、サークルに入っていない人はたくさんいました。

それでも、当然みんな大学生です。

サークルをして、遊んで、少しバイトをして、少し勉強をする。

そんな決められた配分で大学生活を送る必要なんてない。

バイトに時間を使ってもいいし、勉強でも、趣味でも、何か一つの活動でもいい。

自分の力量と、自分の好き嫌いに合わせて時間を配分する。その配分そのものが、自分の大学生活になる。

第2話で僕は、人見知りだからこそ接客業をやってみようと思い、このバイトを始めました。

実際、人と話すことへの抵抗も多少は減ったと思います。

でも、それ以上に大きかったのは、

「大学生とは何か」を、自分なりに考え直せたこと

でした。

火曜日。

1限が終われば日吉を出て、地元へ帰って働く。

華やかな大学生活には見えないかもしれません。

でも、僕はそんな火曜日が好きでした。

サークルでは見つけられなかったものを、僕はバイト先で見つけていました。

少しずつ僕は、「大学生らしく生きる」のではなく、

自分らしく大学生をやる

ということを覚え始めていました。

そして季節は進み、11月。

今度は、それまでの僕なら自分から足を運ぶことのなかった場所へ向かいます。

人生で初めての、ライブです。

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大学にもバイトにも慣れ始めた、大学1年生の秋。

僕は11月、人生で初めてライブへ行きます。

イヤホンの中で聴いていた音楽を、初めて目の前で体験する。

そこから、僕の大学生活に新しい「好き」が加わっていきます。

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